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◆ギリシャ国民投票を終えて~今後の展開
2015.07.07 -
こんにちは、株の学校 マナカブ.com講師の中山です。
本日は七夕ですね。
皆さんは何を短冊に書くのでしょうか。
投資家の多くはギリシャの先行きが無事いい方向に向かうことを願うのかもしれませんね。
さて、5日に開かれたギリシャの緊縮策受け入れに関する国民投票は反対派多数という結果となりました。
多くの投資家は、ギリシャ国民はユーロ離脱を嫌って已む無く賛成に投じるだろうと踏んでいただけにそのショックが大きかったのかもしれません。
5日の朝方に投票が終わり、一番最初に開いたマーケットは東京市場でした。
日経平均はこの結果を受けて、「ギリシャがいよいよ暴挙に乗り出した」と言わんばかりの恐怖から6/29の600円下落のデジャブを髣髴させるが如く、再び日経平均は400円以上の下げ幅を記録しました。
2週連続ブラックマンデー(魔の月曜日)が訪れたわけです。
◆今回の反対派多数票は、あくまでも交渉の立場を有利にするためのパフォーマンス
端的にギリシャの件を理解している人には暴挙にも見える今回の投票結果と日本株の下落から恐怖で狼狽売りしたかもしれませんが、実際には本日7日に開かれるユーロ圏首脳会議で、EUから提案されている緊縮策をうまくかわして支援してもらうためのチプラス首相のパフォーマンスにしか過ぎません。
つまり、ギリシャの言い分はこうだ。
「国民はもう緊縮策に疲弊しているんです。投票結果がそれを物語っているでしょう?
なんとか助けてくださいよ」と。
「同情するならカネをくれ」というフレーズが90年代、日本でも流行語になりましたが、まさにアレを演じているわけです。
それに対して、EU側は、
「既にこちらが許容できるまでのところまで譲歩したよ、これ以上の緊縮策の譲歩はあり得ないよ」
と言っているわけです。
ここから残されたシナリオは以下の3つになります。
パターン① 合意
これが一番世界が望んでいることですが、今回の投票結果を受けて、お互いが歩み寄り合意で着地することです。
パターン② 交渉長期化
今回の国民投票の結果を受けて、パターン①に向かえばいいのですが、今まで延々と揉めていて、今回の国民投票の反対派多数という結果もパフォーマンスであることを知っている債権団ですから一筋縄ではいかないでしょう。
パターン③ 交渉決裂
残念ながら交渉決裂となれば、ギリシャはデフォルトとなり、ユーロ圏離脱を余儀なくされる可能性が出てきます。
パターン②、③となれば、次のギリシャのリミットは10日に控える20億ユーロ(約2700億円)の短期国債の返済期日です。
その後には、14日に控える110億円の円建て債券(サムライ債)の返済期限があります。
そして、20日にはECB(欧州中央銀行)が保有する35億ユーロ(約4700億円)国債の償還期限があります。
もし、上記の返済が滞ってしまうようなことがあれば、ECBはギリシャの国内銀行への資金繰り支援を打ち切るかどうかの判断に迫られることとなります。
◆最終的にはユーロ離脱の選択肢を避けて、折り合いをつける
ただし、このブログで何度も言うようにギリシャがユーロ圏を離脱することはまずないとみています。
市場の動向やその他ユーロ圏重債務国(イタリア、スペイン、ポルトガル)の金利動向、ギリシャ債務の質(公的機関がほとんど)、ECBによるセーフティネットの拡充と、多角的に見てギリシャのユーロ圏離脱はないと思いますし、ギリシャにおいても今回国民投票では緊縮策に反対票を投じましたが、これが「ユーロ圏離脱しますか?」という国民投票であればまずNOなのです。
冷静に考えれば分かりますが、デフォルトとなれば自国通貨(ドラクマ)を発行しなければならなくなります。
デフォルトになったギリシャの通貨なんて誰も信用してくれません。紙切れと同じになります。
そうなれば、ギリシャはハイパーインフレとなり、水1本買うだけでも冗談抜きにリヤカーに札束を積んで買いに行かなければならない、そんな事態に陥ることは火を見るより明らかなわけです。
ドラクマに戻って、信用不安からインフレになり急激な物価上昇が起きた場合、一番困るのはギリシャ国民なのです。
EU側も同じです。
「ギリシャがユーロ圏離脱となれば、他の重債務国も同じ事を考えるんじゃないか?」
特に実体経済が好調なドイツ、フランスなどはコレを恐れています。
◆だけれども将来的にユーロという通貨はなくなる
これは最短で1、2年後のお話になりますが、仮に今回の交渉が決裂し、ギリシャがユーロ圏を離脱して、豊富な観光資源により外貨獲得に成功するようなことができれば、ドラクマの通貨価値を早期に回復させられるでしょう。
万が一、いや億が一このようなファンタジスタが起きればスペインなどのユーロ圏の中でも重債務国の反緊縮派の刺激材料となり、我も我もとスペイン、イタリア、ポルトガルにユーロ圏離脱の声が波及する可能性があります。
緊縮財政を強いられている上記の国でも「隣の芝生は青く見える」流れから不満が爆発し、われ先にギリシャの成功モデルを追い求める動きになることも少なからず想定しています。
そもそもユーロ圏の中でも経済が潤っている国(ドイツ、フランス)と苦しい国(上記各国)が存在している中に「ユーロ」という共通通貨の縛りを置いたことで、各国独自での金融政策が出来ない状態に陥り、歪が生じているわけです。
言わば、「護送船団方式」が裏目に出てしまい、景気悪化しているのにお上の意向で金融引き締めを強いられたり、金融緩和する必要のない国が低金利にしなければならいという矛盾が生じているということです。
具体的にいつぐらいというのは言及できませんが、将来的にはユーロという通貨はなくなるとみています。
僕がやっている体験勉強会はこちらです
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【執筆者(講師)情報】
中山まさかず
学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。