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◆日経平均再び16000円割れ目前、これからどうなるのか?
2016.02.09 受講生の声 -
こんにちは、株の学校 マナカブ.com講師の中山です。
先週末に相場展望のメルマガ読者限定セミナーが無事終わり、2回目の開催もたくさん嬉しい感想を頂きました。
セミナーでは、今年の相場がどうなるのか、そして対処法を皆さんにお伝えしていました。
そのため、この相場をうまく乗り切れている方もいらっしゃるかと思います。
セミナーで教えた銘柄でこの下落相場の中、しっかりと利益を出してくれているマナカブ生もいます^^
セミナーやメルマガの登録をしていない方に今の相場のヒントをお教えしますと、ドル円が今日115円を割り込んでしまいましたよね?
これはかなり重要な節目であると僕はみています。
今日の日経新聞の15面にも大手企業の想定レート見直しの記事が載っていましたが、このほか日本の代表格である
トヨタの第4四半期(1-3月期)の想定レートは115円、ユーロ円が125円を前提とした業績予想をしていることから
ここを割り込めば主力企業の株売りに拍車がかかる可能性があります。
2/5に発表されたトヨタの3Q決算では売上が21.4兆円(6.5%増)、営業利益が2.3兆円(9.0%増)と好調です。
しかし、第3四半期のみ(2015年10~12月)で見ると、前年同期から5%の営業減益となっています。
四半期ベースでの営業減益は、2014年1~3月期以来であり、ドル円がさらに円高に振れれば、5月の本決算発表時に
出てくる来期業績の想定レートはさらに低く見積もられそれに合わせて今期とトントン、最悪の場合減収減益
という見通しも可能性としてはありえるでしょう。
これを踏まえて、いろいろデータを出して生きたいと思います。
上図は、日経平均株価とドル円の推移です。
今の日本株というのは、日経平均に採用されている銘柄の多くが輸出関連であることと政策により円安株高、
円高株安と連動しやすい相場であることはご存知の方も多いと思います。
これが、足元では115円を割り込む水準までドル安円高が進んだことで日本株の押し下げ要因となっています。
しかし、これだけでは説明不足ですので、もう少しロジカルにお話をしたいと思います。
円安になるとなぜ株高になるのか?
これは予想1株利益(EPS)に影響を与えるためです。
外需企業というのは、為替に影響されるため業績見通しは先ほどの想定レートを前提として立てられています。
A社は1ドル=120円であったり
トヨタのようにB社は1ドル=115円であったりと
その予想値が違うわけです。
当然ながら、この想定レートをドル高円安で見込んでいる企業というのは、今のように115円まで円高が
進んでしまうと、想定レートの見直し→企業業績見通しの下方修正をセットで行わなければならなくなるのです。
そのため、為替が影響を及ぼすのは株価ではなく、まずはEPSなのです。
このEPSが下がるとどうなるか?
当然ながら株価が下落するということになるのです。
昨年12/1に日経平均採用の225銘柄の今期の平均予想1株利益は1270円ありました。
しかしこれが足元では1136.65円まで減少しているということです。
円高になる→想定レートが想定以下になる→下方修正の懸念が出てくる(出てきた)→EPSが下がる→株価が下がる
これが今のファンダメンタルズを正直に反映した相場状況です。
テクニカルだけでみている方は16000円は「売られすぎ」、「そろそろ底値」という発言をする方もいますが、
上図で示しているように業績に連動した価格帯になっているため、株価下落にはきちんと理由があって値下がり
しているわけですから、16000円ラインを底値と捉えるのは早計でしょう。
アベノミクスが始まってから日経平均株価のPERはおおよそ下は14倍~16.5倍程度で推移しています。
2/9のEPS(1136.56円)を元に日経平均株価を算出すると
日経平均の下限
1136.65円×PER14倍=15913円
日経平均の上限
1136.56円×PER16.5倍=18755円
下は15913円、上は18755円という水準になります。
「ほら!今日の日経平均株価が16085.44円なので、ここから下げたとしてもあと150円強じゃないか」
と思われるかもしれませんが、重要なことは「EPSが下がり続けている」ということです。
これは、簡単に言えば「持ち株が毎日下方修正を連発している」のと同じことです。
このEPSが仮に1100円まで下がってしまえば、日経平均株価の下は15400円、上は18150円と下限も上限も
きり下がってくるということになるわけです。
先ほどもお伝えしたように、「ドル円が下がる→外需主体企業の想定レートの見直しが入る→下方修正→EPSが下がる」
という負のスパイラルがある以上、今の日本株のEPSは為替にかかっているということです。
◆日本株終わりの始まりになるのか。。。?
そして一つ懸念材料として考えておいていただきたいのは、「今回の下落は昨年夏場の中国株バブルの崩壊で起きた下落よりも
下手をすれば恐ろしいことになる可能性もある」ということです。
もう一度日経平均株価とEPSの推移をみてください。
昨年夏に起きた日本株下落のときは、EPSが下がっていないことが分かると思います。
つまり、昨年の下落は日本株のファンダメンタルズを無視した下落であったため、早々に暮れにかけて値戻しが起きたわけです。
しかし、今回の下落は日経平均株価下落とEPSの減少が連動しており、「完全にファンダメンタルズを加味した下落」になっていることが分かります。
このEPSが復調してこない限りは下値を拾ってもそこからさらに一段安、二段安してくる局面を迎えることも考えられます。
12月発表の日銀短観の大企業・製造業の想定レートは2015年度で119.40円です。
下期だけでみても118.0ドルです。
足元ではすでに3円以上、年度でみれば4.5円近く想定レートよりも円高に振れていますのでドル円が115円を割り込だ
状態が常態化してしまえば、特にドル建て、ユーロ建てで決済を行っている輸出関連企業の下落はキツくなってくるでしょう。
115円を割り込むと市場のセンチメントが非常に悪化しやすく外部要因も重なり一時的に急激な円高ドル安、円高ユーロ安になる
可能性が高く、2月~3月前半で1月の安値16017円を割り込み2番底を試す展開になることも頭に入れておいたほうがいいでしょう。
円高、原油安、地政学リスク、ユーロ圏の財政、政局、日米の経済指標、大型主力株の悪決算、下方修正の乱発と
1株利益の減少につながるような悪い材料が豊富で買えるような材料が無い状況です。
本日の日経平均は終値ベースで918円安となり、春節入りした中国市場を除けば昨晩から日米欧でもっとも下落率の
大きい市場に成り下がってしまいました。
ここからは安いと思って拾っても3月初旬まではそ一段安二段安してくる局面が表れると思いますので、焦って
買い向かう必要はないと思います。
僕はチャートには一切トレンドラインなんてものは引かないのですが、ファンダメンタルズで出てくる数字のデータには引くことがあります。
上図は、週間ベースの日経平均EPSの推移です。
昨年後半は1238円~1270円のレンジでEPSが推移していましたが、昨年12月の第4週(12/25)の時点でこのEPSは
1230.99円を記録し、レンジから下方ブレイクしてしまいました。
つまり、この時点、または一過性ということもあるため次12月第5週(1215.01円)くらいの結果を見てから危険だと
判断しても逃げても遅くはなかったということです。
◆ファンダメンタルズ回復には政府主導による景気刺激策が必要不可欠
また先月末に日銀の金融政策決定会合で打ち出されたマイナス金利効果もわずか1日で打ち消されてしまい、
日銀にも焦燥感が漂っているでしょう。
足元は正直言って買う材料が見当たらないわけですが、この悪化したファンダメンタルズを回復させるには日銀による
金融政策だけでなく、政府による財政政策との二人三脚が必要不可欠になってくるでしょう。
安倍政権は株価に支えられて支持率をなんとか維持しているわけですし、株安となれば資産家票は消失してしまいます。
よって夏の参院選に向けて今のこの状況を静観するとは思えません。
下値の目処は為替次第なところが大分を握っていますが、決算発表が落ち着き悪材料が出尽くした2月下旬~ごろかとみています。
このあたりでいったんの底打ちと考えている理由は
3/10にECB(欧州中央銀行)理事会が開催予定でここで追加緩和をドラギ総裁は打ち出してくるものと思われます。
14-15日は日銀の金融政策決定会合が開かれますのでここで早ければさらなるマイナス金利幅拡大。
そして、
15-16日はFOMCが予定されていますので、ここで利上げ延期となれば低金利維持からいったん為替は
ドル売り円買いにはたらきますが“質への逆流”で米国株高を背景に再びドルが買い戻され円安→日本株浮上の
狼煙が上がるシナリオを想定しています。
この世界のマクロ的な金融政策+安倍政権による財政政策が今後のカギを握っていると言っても過言ではないでしょう。
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【執筆者(講師)情報】
中山まさかず
学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。