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Marketマーケットニュース

◆日本がいま本当にしなければならないこと

2016.02.29 マーケットニュース

こんにちは、株の学校 マナカブ.com講師の中山です。

 

週末にG20が上海で開催されました。

 

 

◆G20やはり具体策出ず、しかし日本にはチャンス

今回の(も)G20では、予想していた通り、世界全体の経済成長押し上げに向けた具体策などが出ることはなく、一応「均衡の取れた成長や市場の安定に向けて、財政を含めたあらゆる政策手段を動員する」というぼんやりとした小田原評定のような声明が出されました。

 

これによって一時的には市場センチメントの改善も図られるかもしれませんが、あくまでも一過性になるとみています。

つまり今の世界各国の減速懸念を払拭するには金融政策だけではなく財政政策の必要性があるわけですが、各国それぞれ抱えている問題が違うために結局のところ、今後も各国の「金融政策プラスアルファ」に懸かっているということです。

 

本日朝方に配信しました無料メルマガで読者の皆さんにはお伝えしましたが、日本にとってのこのG20の内容は5月の伊勢志摩サミットに向けて金融政策だけでなく、財政政策、公共投資などの直接のばら撒き財政を行うためのチャンスであると捉えるべきです。
これまでは財政再建のために「消費増税しろ」と世界から詰められていたわけですが、今回の市場の混乱に対して各国が「まずは市場安定化を目指そう」という話になりましたので、これは大きなチャンスなのです。

 

 

伊勢志摩サミットは当然ながら日本がポスト国になるわけですから、それまでに世界に日本が最初に動いてくれたという見せ方も出来るわけです。

 

 

また通貨安競争についても言及されたようですが、こちらに関しても各国は自国の景気浮揚のためにやっていることであって、あからさまな為替操作ではないところから、どこかを槍玉に挙げての議論ということにもならず、これは目先の日本の金融政策においてもお咎めナシということですからチャンスになります。

 

 

今月23日、衆院財務金融委員会で黒田さんのコメントが物議を醸し出しています。

 

 

◆マネタリーベースの増加、インフレ期待上昇に直結せず=日銀総裁

 

 

内容は、「現行のマイナス金利付き量的緩和が実質金利を引き下げることによって経済にプラスの影響を与えるものの、ベースマネー増加が直接的に物価、あるいは期待インフレ率を押し上げるというわけではない」と語りました。

 

 

リフレ派にとっては「総裁、何てこと言っちまうんだ~~~」ってな感じだと思います。

 

 

 

この発言は、2013年4月に量的・質的金融緩和を導入してほぼ3年が経過する中、金融市場調節の操作目標としているマネタリーベースに対する考え方を変えたことに他なりません。

 

 

導入当初は、

「日銀が経済全体に供給する通貨(お金)の総量であるマネタリーベースが、私どもの積極的な金融緩和姿勢を対外的に分かりやすく伝える上で最も適切」

「物価安定目標の早期実現を約束し、次元の違う金融緩和を継続することにより、市場や経済主体の期待を抜本的に転換する」

と言っていました。

 

 

 

マネタリーベースは市中に出回っている銀行券(お札)と貨幣(コイン)の残高に、金融機関が日銀に預けている当座預金の残高を加えたものです。

黒田総裁は13年4月4日、「2年程度の期間を念頭に置いて2%の物価安定目標を実現する」と表明しマネタリーベースと長期国債・指数連動型上場投資信託(ETF)の保有額を2年で2倍にするという目標を掲げスタートしたわけですが、これによりマネタリーベースは以下のように増えました。

 

 

2012年末 132兆円

2013年末 193兆円

2014年末 276兆円

2015年末 356兆円

と着実に増やしてきたわけです。

 

 

しかしながら、インフレ率の計るコアCPI(消費者物価指数)は昨年12月の数字で前年比0.1%と、2%の物価目標には遠く及ばない水準にあります。

 

 

また、この2%の物価目標の達成時期については、

2015年度から、16年度前半、そして後半と後ずれになり、マイナス金利を導入した今年1/29では日銀の2%物価目標の達成時期はさらに2017年度前半まで延ばされました。

 

 

一応日銀では、原油価格が物価上昇の押し下げ要因としてはたらいており、原油価格が正常化してくれば物価も上昇していくという見方をしています。

 

 

 

◆実際問題、量的緩和だけでは物価は上昇しない

しかし、物価の上昇ってそんなに簡単なものではないんですよ。

 

 

いくらお金を刷り捲くって、お金の価値を下げたとしても国民に「将来のインフレ率上昇」を論理的に植え付けていかなければ物価は上昇していきません。

 

 

量的緩和策は円安と株高はもたらしましたが、本来の目的である実質金利の低下による設備投資の増加や貸出の増加には残念ながらつながっていないというのが現状です。

 

 

量的緩和の本来の目的は大量にお金を刷って国債やETFなどの資産を購入することによって市中にマネーを大量に供給し、市場にインフレ期待を起こすことにあります。

 

 

 

「量的緩和」のメカニズムを改めて順序立てて説明すると、

 

 

大規模な長期国債の買い入れ+2%の物価安定目標への明確なコミットメント

名目金利を引き下げて、実質金利(名目金利-期待インフレ率)を押し下げる

実質金利を下げることにより民間需要を喚起させ、需給ギャップの改善にはたらきかける

需給ギャップの改善は、人々の予想インフレ率の期待となり現実のインフレ率を押し上げる

名目金利は実質金利とインフレ率の和であるため、インフレ率が上昇することによって実質金利が押し下げられ景気回復につながる(実際はつなげたい)

 

 

というのが政府日銀の目標です。

 

 

上記のメカニズムを要約すると、期待インフレ率が高くなると、実質金利(名目金利-期待インフレ率)が低下することになるので、融資が伸び設備投資が増加するという流れになるのですが、この量的緩和が訴求したのは円安と株高であって、供給されたマネーは実経済には流れずにマーケットに流れただけということが問題なわけです。

 

 

量的緩和によって円安が進行したことで物価の上昇も起こりました。

 

 

しかしそれは「為替インフレ」という偽者の物価上昇であって、実体経済を伴った物価上昇ではないため、企業の投資や個人の消費が増えていなくて、日銀はまだ足りないのか?まだ足りないのか?と強力なステロイドを市場に投与しているように見えてしまい、海外勢から見ても日本の金融政策は限界に来ていると言われてしまっているのです。

 

 

◆アベノミクスというより、今は寧ろ「黒頼みクス(クロダノミクス)」

2012年11月に安倍政権が発足し、アベノミクスがスタートしたわけですが、もうすっかり忘れ去られている「アベノミクス3本の矢」を思い出してみましょう。

 

・大胆な金融緩和

・機動的な財政政策

・民間投資を喚起する成長戦略

だったわけですが、現状としては日銀の黒田産による金融緩和だけが目立つ存在になっており、

「アベノミクス1本の矢」と言っても過言ではないような気がします。

 

 

 

◆財政政策、成長戦略があっての金融政策でなければ日本回復は無い

僕はリフレ派でも反リフレ派でもありませんが、冷静に考えるとこの順番が間違えているような気がします。

 

   1:機動的な財政政策 2:民間投資を喚起する成長戦略

      上記2つを下支えする補完措置的な金融緩和策

 

 

イメージ的には財政政策と成長戦略がまず前面にあって、それを下支えする金融緩和策であるべきだと思うわけです。

 

 

これが、現状は金融緩和だけが前のめりになってしまい、財政政策や成長戦略がぼやけていることが企業や個人がインフレマインドにならない根本的な原因のような気がします。

 

 

これは安倍さんにも原因があると思います。

黒田さんが異次元の金融緩和を発動してくれたことで円安株高が演出されました。

 

 

コレに対して安倍さんは

「お金刷ったら簡単に円安になって株価も上がった~」と、忌憚の無い言い方をすればこれに胡坐をかいてしまったのが現安倍政権なのではないかと言うことです。

 

 

それだけで支持率も上がったわけですから、安倍さんは本来の目的である改憲に力を入れるわけですわな。

 

 

政権復帰後に安倍さんの側近が言っていたことを思い出します。

「アベノミクスは小目標、中目標が集団的自衛権の行使容認、政権の大目標は憲法改正」

 

 

アベノミクスと集団的自衛権に手を付けたあと、安倍政治の最終目標は憲法改正に他ならないということです。

 

 

つまり自分の大目標のために足元の小目標を甘くみてしまったことが今の経済不安を生んでいるというわけです。

 

 

お金をいくら増刷しても国民に有効な使い方を示してあげられていない、株価だけではなくマインドを上向かせる政策を打ち出さなければ誰だって使わないのです。

 

 

総務省が毎月発表する家計消費支出は昨年12月は▲4.4%と大きな落ち込みで4ヶ月連続のマイナスです。

http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.htm

 

 

日銀発表の企業物価指数もアベノミクスが始まってからを見てもらえれば分かりますが、ここ最近はマイナスとなる月が連発です。

2013年

http://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi1312.pdf

2014年

http://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi1412.pdf

2015年~直近

http://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi1601.pdf

 

足元の国内企業物価指数は8ヶ月連続のマイナスです。

 

 

 

確かにアベノミクスによって株価は上昇し企業の業績も上がりました。

首相官邸のHPには惜しげもなく「企業の経常利益 過去最高水準」と堂々と書かれています。

http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/sanbonnoya.html

 

 

 

しかしそれが設備投資や従業員の賃金上昇に積極的に回らない理由を国はきちんと把握しているのでしょうか?

 

 

それは円安効果のみによって齎された「薄っぺらい偽者の増収増益」だからなんですよ。

 

 

それを自分のことは棚に上げて「国が頑張って景気浮揚をしようとしても企業の皆様がベースアップや設備投資にお金を回してくれなければ日本は良くなりませんから使ってください」とはよく言えたものです。

 

 

上記の数字が企業も不安だから内部留保は増えたものの、中長期でリスクと負担を抱えることになる設備投資や従業員の賃上げにはカネは回らず、単発の自社株買いや増配といったリスクの少ない資本政策にばかりカネが回るわけです。

 

 

話を戻すとこの根本的なデフレマインドの払拭が出来ず虚像のアベノミクスに成り下がってしまったのは、金融緩和頼みになってしまったからに他なりません。

 

 

 

G20が終わり、伊勢志摩サミット、参院選目前です。

今こそ「アベノミクス一本の矢」から抜け出すときです。

 

 

補正予算組むでも財政政策でも良いのでとりあえず分かりやすく国民に安心して明日を描ける道筋を指し示し、

その補完措置的な位置づけでの金融政策に転換

 

 

一番のこの国の問題は少子化です。政府もそれは一番分かってることでしょう。

国民の多くが将来年金もらえるか不安で不安で仕方ないのです。

 

 

だから、副業やったり株やったりするわけです。

 

 

しかし副業も今後マイナンバーで管理されて裏で所得があることが会社にバレるとまずいからってことで辞めざるを得ない世のお父さんや夜のおねーちゃんがたくさん出て来ます。

 

 

徴税制度を厳しくし過ぎて一人当たりの可処分所得を減らしてしまえば元も子もないでしょう?

さらに消費冷え込んじゃいますよ?

 

 

だったらいっそのこと法律でも条令でも変えて「条件付き副業支援制度」とか作っちゃえばいいじゃないっすか。

従業員が同業で働く場合はノウハウとか顧客情報の流出とかの危険があるので、「本業とは関係のない副業の場合は、会社は認めないといけない」とかにしちゃえばいーじゃないっすか。

そっちのほうこそ「一億総括役社会」ってヤツに近づくと思いますけどね。

 

 

 

今の消費税8%にしたって、国の財務は別に良くなってないわけですから、それならいっそのこと5%に戻して消費喚起させる、若しくはいま増税してる+3%分の使い方を保育園作るなり、小中高、大学の費用をその財源使って進学する子供たちの授業料を一部負担するだとか、徹底して少子化対策にしか使わないと約束する。

 

そしてCM流すでもいいですしこのことをきちんと国民に周知徹底させる。

そうすれば「この国で安心して子供が生める」という風潮に変わっていき出生率も上がるし、それをきちんと見える化して、HPとかで歳入と歳出を四半期ごとでも良いので報告していけば国民は喜んでお金使ってくれるし、年金未払いも減ると思いますよ。

 

 

消費に回した分、自分の消費税が子供たちの教育に使われ、将来自分が年取ったときに育った子供たちが年金で支えてくれるって。

なんかこっちの方が「カネは天下の回りもの」的な実感あるじゃないですか。

 

 

とにかく財政政策と安心して「消費に回せる」国づくりをしていかなければこのままでは、金融緩和だけではその副作用の方が将来的に大きくなります。

 

黒田のハルちゃんにだけ頑張らせてもそりゃダメだって。

 

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【執筆者(講師)情報】

ライター

中山まさかず

学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。

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