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◆8月相場は「上もなければ下もない」

2016.08.02

こんにちは、株の学校 マナカブ.com講師の中山です。

 

先週金曜日に日銀金融政策決定会合が行われましたが、一応追加緩和発動という結果になりました。

 

4月、6月の会合でも追加緩和ナシ、そして参院選後の今回の日銀会合ということもあって、今回の日銀会合ほど市場が注目しなかったことはなかったかもしれません。

 

まず、会合までの相場を振り返ってみると、参院選後、バーナンキ前FRB議長が訪日され、安倍さんは黒田さんと会談したことから、「ヘリコプター・マネーの発動があるのでは?」という期待が市場を覆い尽くし、日経平均は7/8の安値15106円から7/21の高値16938円まで1800円を超える上昇となりました。

 

しかし、黒田さんがバーナンキさんと会談した後の会見では「ヘリコプターマネーは考えてもいない」というコメントや、財務省が「50年債の発行は考えていない」という声明が出たことで相場はいったん落ち着き、会合を迎えることになりました。

 

実際に今回の日銀会合で発表された追加緩和措置は

・ETFの買い入れ増額(現行の年間3.3兆円→6兆円)

・ドル調達コストの支援(現行120億ドル→240億ドル)

市場が想定していた事実上の財政ファイナンスになり得るヘリマネは見送られたわけです。

 

日銀の本来の目的は「2%の物価安定の目標を早期に実現すること」ですが、これでは追加緩和策どころか、株価サポート策でしかありません。

しかし、今回の会合では、政府の経済対策に足並みをそろえて「敢えてのETFの増額のみ」ということにしたとも取れる「次回への期待」を残してくれました。

 

それが「次回の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向や政策効果について【総括的な検証】を行う」というものです。

 

つまり、これまで行ってきた量、質、金利の3次元の金融緩和が2%の物価目標に対してどれほどの効果があるのか総括的に検証を行い、次回会合で(おそらく)発表するということです。

 

今行っている3次元の量的質的金融緩和が2%の物価安定につながらなければ、何が必要な策なのか検証をしたうえで講じるということなのでしょう。

 

これを聞いてメディアでは「検証した結果、現行の金融政策があまり効果がないと判断されれば、国債買い入れ額の減額などがあるのではないか?」と不安を煽る報道が一部見られますが、それはまずありません。

 

会合後の黒田さんの記者会見で、記者の質問に対して以下のように述べられています。

 

(記者質問) 日銀のETF買入れに対しては、かねてから株価というのは企業の収益であるとかファンダメンタルズで決まるもので、市場機能を歪めるおそれがあると指摘されてきたわけですが、これを今回倍増させると、さらに市場機能を損ねるおそれ、もっと言えば日銀による相場操縦ではないか、という見方に対して、どのようにお考えになるかというのが 1 点です。

もう 1 つは、「総括的な検証」についてですが、当初 2 年を目指してやってきていたものが、3 年が過ぎて、短期決戦のはずだったものが持久戦を強いられているということを踏まえた体制立て直し的な意味があると理解してよろしいでしょうか。

 

(答) まず、ETFの買入れ額を 6 兆円にほぼ倍増するということについては、先程来申し上げているように、英国のEU離脱をはじめとする海外経済の不透明感が高まっている、あるいは国際金融市場が不安定化していることを踏まえて、企業や家計のコンフィデンスの悪化を防止する観点から決定しました。

ETFの買入れは、別に特定の株価を目標にして行っているものではもちろんありません。基本的にはリスクプレミアムに働きかけて、株式市場、資本市場がより適切に機能するようにサポートしているものであり、株式市場の機能を損ねることはないと思っています。

国債の買入れにしても、その他色々な金融資産の市場からの買入れにしても、市場の価格に影響を及ぼすことは事実ですが、それによって、経済活動を支え、「物価安定の目標」を達成するということであり、何か特定の株価を実現しようとして行っているものではありません。もちろん、こういうことを通じて、そうでない場合と比べて株価が上昇するであろうということはその通りだと思いますが、市場機能を損ねてはいないと思っています。
2 点目については、立て直しという言い方がよいかどうか分かりませんが、ご指摘のように 2 年程度を念頭に置いてできるだけ早期に実現するということで、3 年 3 か月くらい前に「量的・質的金融緩和」を導入し、それを 2014年 10 月に拡大し、今年の 1 月にはマイナス金利を導入したということです。

そうした中で、色々な海外の事情等にもよるとは思いますが、物価上昇率がまだ 2%に達していないということはその通りですので、そういった状況を踏まえて、2%をできるだけ早期に実現するために何が必要か、という観点から「総括的な検証」を行い、さらに何か必要があれば当然金融政策についても考えていくことになると思います。まだ「総括的な検証」をする前の段階ですので、具体的なことは申し上げられませんが、あくまでも 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために何が必要か、という観点から「総括的な検
証」を行い、今後の金融政策に役立てていくことになろうと思います。

 

 

(記者質問) 政策の検証についての確認なのですが、このタイミングで実施されるということは、2%の早期達成のためには、これまでの現行の政策の枠組みが力不足であったという認識が前提にあるのでしょうか。また、その意味で、検証を行った結果、マイナス金利を撤回するとか国債買入れを減額するといった方向性よりも、3 つの次元をさらに強化していく、そういう方向になる可能性が高いとお考えなのか、教えて下さい。

 

(答) まだ「総括的な検証」を行う前ですので、特定の方向性を言うのは適切でないと思いますが、ご指摘のように 2%がまだ実現されていないわけですから、2%をできるだけ早期に実現するために何が必要かという観点から、「総括的な検証」を行い、その検証結果に応じて必要な措置を採るということに尽きると思います。

 

上記からも分かるように、仮に現行の3次元の異次元緩和が効果がないという結果になったとしても2%の物価安定を実現する目標に変更はないため、違うやり方で2%達成に向けて行っていくということがお分かりいただけると思います。

 

次回の日銀会合は9/20,21ですので、それまでは今回の株価サポート策として発動された年間6兆円のETF買い入れが下値を支えてくれることになってくるでしょう。

しかし残念ながら今回の内容はお世辞にも追加緩和と呼べるものではなく、あくまでも下値を支えるだけの効果しかありません。

 

日銀が公表しているETFの買い入れオペを見てもらえれば分かりますが、ETFの買い入れを行うタイミングは適当にやっているわけではなく、「もれなく日経平均が下落した時に下支えとして買うスタンス」で買い入れを行っており、、トレンドフォロー的な上値を積極的に買うというスタンスではありません。

 

つまり、下は限定的だが、上値を買う投資家が表れない限り小幅なレンジが続くということになります。

 

そして、上も限定的とみています。

 

 

 

◆経済対策28兆円のマヤカシ

先日安倍さんは福岡市で講演し、事業規模28兆円を超える新たな経済対策を来週取りまとめたいとの意向を示しました。
当初の予想では10兆円程度となるとの見方があっただけにこの報道が出ると日本株は一時400円を超える上昇を見せたものの、結果として上げ幅縮小し「元の木阿弥」となりました。

 

具体的な内容は経済対策28兆円のうち、国と地方の財政支出と国が低金利で民間事業に長期融資などを行う「財政投融資」を合わせた財政措置は13兆円規模という内容です。

 

見出しは28兆円とインパクトはあるのですが、これに騙されてはいけません。

 

重要なのはこの中から「真水」と呼ばれる政府が直接負担する金額がいったいいくらなのかが重要で、実際のところは13兆円の中から今のGDPの需給ギャップを埋める7兆円程度です。

しかも、その詳細は「複数年に渡って7兆円」というものなのです。

 

これでは経済対策としてのインパクトは限定的です。。。

 

分かりやすくこれと比較するならば2013年アベノミクススタートとなった時に使われた真水部分の財政支出は約13兆円でした。

これが「いよいよ日本が本気になった」と海外勢に知らしめる黙示禄となったわけです。

 

当時はこれで見事に海外勢を振り向かせることができたため、2013年、海外勢15兆円もの日本株買いを行い、8000円前後だった日経平均株価は、1年で2倍となる株高となったのです。

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それと比較してもらえれば、今回の「経済対策28兆円(でも実際のところ真水部分は複数年にわたって7兆円)」というのが狗肉も狗肉、いかに羊頭狗肉であるかお分かりいただけるかと思います。

 

実際のところは28兆円のうち財政投融資を含めた22兆円は融資枠、つまり政府が身銭を切らない部分ということなります。

しかも融資枠であるため、これは利用する事業者が表れない限りバーチャルな数字でしかないということです。

 

しかしながら政府として喧伝するなら真水7兆円よりも融資枠をパッケージングした「経済対策28兆円」と謳った方が当然ながら見栄えは良いわけで、このような報道になっているものと思われます。

 

おそらくニュースを書いている一部メディアの人間もこのマヤカシにはまったく気づかずに書いているフシが記事の書き方から見て取れます。

しかし相場は正直なもので、報道が出た7/27はこの金額のインパクトで日経平均はいったん上昇しましたが、その後、このマヤカシに気付きシュリンクする形になったと思われます。

 

事業規模28兆円のマヤカシにプロの投資家たちが騙されるとは到底思えません。

 

トレンドフォロー(上値を追いかけて買ってくれる)をメイン手法とするのは年金や政府系ファンドを運用する外国人投資家たちです。

彼らが、日本株を買ってこないことには上昇もありません。

 

これがもし評価されているならば7/21の高値を超えて上昇となってもおかしくはありませんが、海外勢が上値を追わないということはそういうことです。

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8月相場は始まったばかりです。夏枯れという言葉があるように、サマーバケーション、リオ五輪などで相場が閑散とする展開が予想されます。また原油価格が下落していることも気がかりです。

そのため、この閑散期を狙って足の速いヘッジファンドがボラを演出しやすいタイミングでもありますので、一時的に下げる場面が出てくるかもしれませんが、先般の日銀による株価サポート策がありますので、瞬間風速的に下げたとしても15500円程度かと思われます。

 

そのような局面が表れれば積極的に仕込みに回れば、再び9月の日銀会合への期待から値を戻す相場になると思います。

今の相場は下げたところを丁寧に拾えば取れる相場です。

 

 

 

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【執筆者(講師)情報】

ライター

中山まさかず

学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。

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