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◆リスクヘッジの金投資
2016.10.26 -
こんにちは、株の学校 マナカブ.com講師の中山です。
米国の7-9月期の決算発表がラッシュの時期に入っています。
日用品大手のP&Gなどは好決算を発表している一方で、ドル高が米国の製造業へダメージを与えています。
今月頭に発表された9月の雇用統計は予想17.2万人に対して15.6万人と下回ったものの、今年の1-9月の9か月平均では18.4万人と堅調で雇用指標は完全雇用が近づく中、利上げを急ぎたいFRBの視点は平均時給の伸びが加速してインフレ率が上昇してくるかどうかに注目しています。
【PCE コアデフレータ】
FRBがインフレ率で注目している指標はPCEコアデフレータです。
FRBは物価目標を日本と同じく年で2%を目指していますが、足元9月の結果は1.7%と残念ながら届いていません。
9月に行われたOPECの非公式会合で産油国が原油の生産調整に合意をしたことで油価は1バレル=50ドルに回復してきており、インフレ率上昇への期待も高まりますが、11月に行われる公式会合での正式合意がなされるまでは予断を許さない展開です。
原油価格のほかにインフレ率が上がってくるためには雇用者の平均時給の伸びが加速していくことが重要です。
【米国・平均時給の推移】
9月の平均時給は25ドル79セントと右肩上がりではありますが、雇用の伸びに対して時給の伸びは非常に緩やかです。
8月から9月の伸び率はわずか0.2%で雇用者数の伸びはこれから徐々に減少していき、早ければ年内には月次で15万人を割り込む水準に入ってくると思いますが、そうなったときにこの平均時給が伸びるかどうかがインフレ率上昇のカギを握ってくるでしょう。
◆米国の利上げは2017年も緩やかなペースになる可能性
FOMCは当初2016年の利上げ目標を年に4回としていましたが、これが今年の3月には2回と下方修正され、その2回も履行できませんでした。
今年はあと2回FOMCが予定されていますが、12月利上げの年1回が市場のコンセンサスです。
大統領選挙も3回のテレビ討論会が終了し、クリントン候補優勢の展開でトランプ氏の勝利はほぼ消えて市場を取り巻く不透明要素も徐々に霧が晴れてきつつありますが、来年も
・原油価格の安定(緩やかな上昇)
・平均時給の伸び→個人消費の伸び→インフレ率の上昇
が米国利上げのカギを握りますが、来年3月にはイギリスのメイ首相がEU離脱交渉を進めるという動きもあることから世界経済の不透明要素は残ります。
現在米国経済の好調が世界市場をけん引している状況で、日欧はご存知の通り金融緩和に傾倒しています。
仮にこのアメリカマンパワーの失速が起これば、米国も終了した金融緩和に巻き戻しということになります。
また、そうならないためにもFRBは比較的米国経済が堅調なときに出来るだけ利上げを敢行しておき、経済が失速した時に緩和が出来る環境を作っておきたいと考えているわけですが、なかなか経済指標が追い付かず利上げに踏み切ることが出来ないというのが現状です。
米国景気が追い付いていない段階で経済成長が下振れしたときに備えて緩和できる余力を作ろうと無理に利上げを進めれば、せっかく回復してきた景気を縮小させることになってしまいます。
こう考えると、来年もインフレ率次第ではありますが、利上げのペースは緩やかになる可能性が高いとみています。
相場に携わると必ず年に一度は相場を揺るがすような悪材料が勃発します。
今年だけでも原油価格下落による産油国の財政悪化、イギリスのEU離脱、ドイツ銀行の信用不安などがあったことは記憶に新しいところです。
このような突発的な事態が起きれば、安全資産としての債券が買われ金利は低下します。
【米国10年債利回り】
米国の金利低下はドル安圧力となりますので、相対的に円が買われ日本株にも重しとなります。
しかし、この米国金利が低下し世界同時株安が起きるなか、涼しい顔して上昇するものがあるんです。
こちらのチャートは米国10年債利回りの週足のチャートです。
そして紫の値動きを併せてみてもらえれば分かりますが、こちらは米国の金利が低下するタイミングで上昇していることが分かります。
この紫の値動きは金(ゴールド)の値動きです。
金は埋蔵量が決まっていることや、かつて世界には金本位制があったように経済が不安になると安全資産として買われます。
しかし、ゴールドを保有していても金利は付かないため、米国の金利が上昇すれば逆に値を下げてしまいます。
米国はこれからも利上げを進めるスタンスではいるものの、相場には不確定要素が存在しているのもまた事実です。
来年も米国の利上げが鈍化傾向にある中、世界的な株安リスクは都度存在し続けていますので綱引きで考えれば米国利上げによる金価格の下落リスクよりも、突発的な悪材料によるリスクオフの債券買い金利低下→相対的に安全資産としての金需要が強まる場面が必ず表れます。
◆金を買うには?
金取引には商品先物に口座を開くか先物オプション口座を持っていれば金先物の取引が出来ますが、通常の証券口座だけでも実は金の値動きを取ることが可能です。
ETF(上場投資信託)やETN(上場投資証券)というものがあり、これは通常の個別銘柄と同じように指数や商品価格と連動した証券がいくつか上場しています。
この中にゴールドの値動きと連動するように構成されたETF、ETNが実はあるんです。
【金価格チャート】
これが金の日足1年間のチャートです。
押し目を作りながら上昇トレンドを形成して、足元でも急落後、底打ちして反転の動きが見え始めています。
【純金上場投資信託(1540)】
そしてこれがETFで上場している純金投資信託【1540】です。
一見すると全然違うチャートのように見えるかもしれませんが、ゴールドが上昇する局面でこちらの銘柄も上昇していることが分かるかと思います。
もう一つ、ETNの方では
【NEXT NOTES 日経・TOCOM金ダブル・ブル ETN(2036)】
こちらも同様に金価格との相関性が見られます。
そのため、わざわざ口座を増やさずに利上げ鈍化リスク、株安リスクに備えて金連動商品を買っておくことでヘッジをかけることが出来るわけです。
今の相場は純粋な投資家以外に中央銀行が介入するようなマーケットに変遷してしまいました。
官製相場、債券バブル、緩和バブルと言われ久しいですが、いつまでも力技で相場を捻じ曲げることはできません。
いつか限界が来ます。
個人投資家は資産を守るために投資先のバリエーションを増やさなければ生き残ることはできません。
その一つの武器として「金でのヘッジという手法があるんだなー」と何となく頭に入れておいてもらえればと思います。
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【執筆者(講師)情報】
中山まさかず
学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。