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◆マーケットを揺るがすイベントは単発ものか継続ものかで考える
2017.03.24 -
こんにちは、株の学校 マナカブ.com講師の中山です。
今週も1週間お疲れ様でした。
今週も米国の政局の行方に揺さぶられる1週間と言っていい動きとなりました。
市場が注目していたのは医療保険制度改革法案(オバマケア)の改廃法案についてです。
市場はオバマケア、オバマケアと宣っているわけですが、まずはこのオバマケアとはいったいどんなものなのか、そこから振り返りたいと思います。
オバマケアとは??
米国では日本のように健康保険制度が充実しておらず、多くの人が医療保険に加入していません。
その加入促進を目的として2014年にスタートしたのがこのオバマケアです。
しかし、保険会社への規制強化が進められて保険料が値上がりし、医療費の高騰も重なって保険制度の状況は改善されていません。
民主党の前大統領オバマさんが作ったのでオバマケアと名前がついていますが、共和党はこのオバマケアに反対しており、3月23日に代替法案を可決することにより、共和党の勝利を強調する狙いでした。
しかし、保守派が代替案はまだ不十分として賛成を取り付けることが出来ずに採決が延期されたというのが今の状況です。
これが正式に延期となる前々日の21日に、トランプ氏が「オバマケア改正法案を通さなければ有権者の反感を買うことになるだろう」と共和党に圧力をかけたことで、共和党内で軋轢が生じるのではないか?という懸念から市場では米国株は23日に久しぶりに200ドル以上下落する目の覚める下落となりました。
市場が注目しているのはこのオバマケアの改正法案の行方自体が問題ではなく、オバマケアで前途多難となればその後の他のトランプ氏が政策として掲げる減税政策、インフラ投資の雲行きも怪しくなるのではないか?という不安がリスクオフに傾けさせることとなりました。
この流れは日本株にも波及し、翌朝の22日、日本株も400円を超える下落となり、下落率で見れば対岸の火事とも思える日本株の方が下落率は大きいものとなりました。
普通であれば投資マネーが集中していた分ダウの方が下落率が大きくならなければならないのに日本株の方が下げが大きいということはそれだけ世界から見て日本株は景気敏感株であることの証左でしょう。
◆2月国内貿易統計は8134億円の黒字
加えて、今週22日に発表された2月の国内貿易統計は予想8072億円に対して8134億円となったことで、円高が進行したことも日本株の重石となった要因だと思われます。
昨年暮れよりOPECを中心とした減産合意がなされたことで原油価格の回復が顕著ですが、原油価格が上昇すれば日本の交易条件は悪化します。
しかし昨年の中東での減産合意から油価上昇となっていながらも、2月の貿易統計では黒字が膨らむ結果となりました。
こと交易条件の良化は良いことではありますが、貿易黒字の拡大は円高要因となりますのでこの内容を受けて、足元では米国の利上げペースの拡大期待で膨らんでいた投機筋の円売りポジションのカバー(買戻し)も
さらに入ったものと思われます。
CFTC発表の3月14日付けの投機筋の円先物ポジションはFOMC前には7.1万枚まで円売り(逆を言えばドル買い)ポジションが膨らんでいました。しかしながら、イエレンFRB議長のFOMC後の講演では特段タカ派とみられるような発言がなかったことで利上げペースは緩やかになるという思惑から急激な円ショートカバーが入り、加えて今回の国内の貿易黒字の拡大も重なり、ドル円は今週110円台半ばまで円高が進行した形となりました。
ただ長い目で見れば米国経済は今のところ堅調であり、利上げ期待、トランプ政策による景気刺激策期待からドル高の方向性は変わっていないためドルの下げも限定的で本日は再び111円台半ばまで回復する展開となっています。
◆イベントものは単発か継続かで考える
今回のブログのタイトルにも書きましたが、貿易黒字の拡大は円高要因となりますのでこちらは継続ウォッチが必要となります。
一方でオバマケアなどの法案可決の行方など政治リスク問題は結構単発もののイベントでマーケットに継続して意識される問題ではありません。
ましてや日本でもきのうの昼間からワイドショーを賑わせている渦中の小学校の建設に政治家が絡んだとか、口利きがなされたとか献金があったというような問題はまったくもって「人のうわさも75日」のど真ん中、どストライクの話題であり長期化するような話ではありません。
しかし市場では株価の上げ下げに必ず理由をつけたがるため、今回の政治スキャンダルが株価下落につながっていると持て囃すわけです。
そちらの方が記事としてもキャッチーですし、読まれやすくなりますからね。
ことの真意も分からない人が書いたものをさらに分からない人が読むので話が取っ散らかるわけです。
ここがまさに「日本人はメディアリテラシーが弱い」と言われる所以です。
情報が発信されるということは、その発信者には何か意図があると常に考えなければなりません。
クリティカルシンキングのスキルを高めていくことが重要です。
政治リスクは大小さまざまで、金融政策、財政政策、税制改正などは単発ものではありません。
これはその後の経済動向に影響を及ぼすため継続していく問題です。
オランダの総選挙はポピュリズムとして恐れられていた極右政党自由党が第一党とはなりませんでしたが、来月4月23日にはフランス大統領選挙が行われます。
参照:https://ig.ft.com/sites/france-election/polls/フィナンシャルタイムズが公表している世論調査では、反イスラム、反EUを掲げるフランスの「女トランプ」と呼ばれているルペン氏と中道派のマクロン氏が拮抗しています。
フランス大統領選挙は2回に分けて行われ、第1回投票で勝利した2名の一騎打ちが5月7日に行われるというスケジュールになっています。
以前ブログでも書きましたが、フランス大統領でルペン氏が勝利をしてしまうと、ブレグジットに次ぐフレグジット(フランスのEU離脱)の懸念が高まることから4月下旬~5月頭はこの選挙に相場は振り回される展開になるでしょう。
ここで中道派のマクロン氏、もしくはフィヨン氏が勝利となればそれで終わりですが、ルペン氏が勝利してしまえばその他の国にEU残留の意義が問われるため継続ウォッチのイベントとなってきます。
欧州政治の混乱は日本株にとってももちろん影響します。
政治不安からユーロ売りが出やすくなり相対的に安全通貨としての円が買われやすくなり円高→株安という展開になりますので、4月後半は注意です。
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【執筆者(講師)情報】
中山まさかず
学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。