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◆国民をだました日本郵政株の売り出し
2017.10.25 -
こんにちは、株の学校 マナカブ.com講師の中山です。
日経平均株価は、今日の下げで16連騰記録はストップとなりました。
きのうの米国市場は大幅高となっていましたので今日も朝の勢いから察すると連騰記録更新か??と思いましたが、残念ながら▲97円の21707.62円で大引けを迎えることになりました。
ただ日本の株式市場がスタートして以来初めての16連騰、この新記録に立ち会えたことが何よりうれしいことです。
なんせ57年ぶりの新記録更新ですからね。
この時代に生まれてきて良かったと感謝しなければと思うところです。
これまでもブログやメルマガでは22000円は年内に到達すると公言していたのですが、本日高値で21921.36円まで上昇となったもののあと一歩届かずでお預けを食らうことになりました。
でもスタンスは変わっておらず、これだけ連日上昇となればいったん調整を迎えても何らおかしくはありません。
◆いつの時代も搾取されるのは弱小な個人投資家
きのう、引け後に某銀行のバンカーと話すことがありましたが、そのバンカーはリテール営業向けに日本株インデックスファンドを売り出せと上から言われたそうです。
これが今なら買った個人投資家は儲かっているかもしれません。
しかし、上から売り出せと言われたのは2015年11月です。
15年の11月と言ったら、日経平均株価でいえばこんな感じのタイミングです。
そのバンカーも「なぜにこの(こんな高値)タイミングで売り出すのか。。。」と思ったようですが、上からの指示だったためそれに従って売り出すしかなかったようです。
日経平均のインデックスファンドですから、その金融商品も日経平均とまったく同じ動きをしていきます。
最近になって漸く売り出し時の価格を超えて、販売した顧客に顔向けできるようになったと言ってました。
海外の投資家もそうですが、セルサイドの人間は厳しいノルマがあったり、手数料勝負なので顧客が利益出そうが損しようが実際のところ関係ありません。
自分の懐は何も痛みませんからね。むしろ売ればボーナスが跳ね上がります。
株をやっている方ならば、米国の投資ブローカーとして栄え、最後は投資詐欺としてパクられたジョーダン・ベルフォートの半生を描いた映画「ウルフオブウォールストリート」をご存知の方もいらっしゃるかと思います。
この映画を一度でも観たことがある方ならわかるかと思いますが、映画ではちょっと表現が過剰過ぎますがまぁ似たようなものだと思ってもらって良いと思います。
名前は出せませんが、知り合いが勤める某証券会社では「1000万円以上の資産を持っていない人間は客として扱わない」、そんな世界です。
だからいつもババを引かされるのは弱小の個人投資家になるのです。
◆国民をだました日本郵政株の売り出し
9月25日、財務省が大株主に君臨する日本郵政【6178】の大量売り出しの発表があったのは記憶に新しいところかと思います。
読者の方の中にもセルサイドの人間から「郵政株、買いませんか?」という営業の電話があった人も少なくないと思います。
僕のところにもマナカブ生からではありませんが、「郵政株の売り出しについてどう思いますか?」と何件か相談がありましたが、「僕だったらどんなにお願いされても絶対に買いません」と一刀両断して差し上げました。
その理由としては同社の将来の成長性がないからです。
今回の売り出し価格は1322円で、9月25日の終値1349円から2%のディスカウントプライスで7616万株が売りに出されました。
シロウトならば、「大手で潰れない日本郵政株を市場よりも安く買える!」と思って買われた方もいると思います。
おそらく営業トークもこの手のトークでまるめ込まれたことでしょう。
おかげさまでマナカブ生からこの手の相談はありませんでした。
おそらくきちんと目利きが出来ているということの証左でしょう^^
株価収益率(PER)水準で見ると今もなお14倍台、株価純資産倍率(PBR)を見ても1倍割れと一見すると割安な水準にあるかもしれませんが、これは将来の利益が未来永劫続くと仮定した場合の前提条件の基であって、個人投資家の多くが目にしているPERは将来価値を現在価格で割り引いたものになるため僕は割高と判断しています。
というのも、日本郵政は日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命を傘下に持つ持ち株会社ですがこのどれもが国内でサービスを完結しているという点で同業他社と比較しても優位性はなく、今後の業績は尻すぼみになっていくと思われます。
つまり将来になるにつれてPERもPBRも割高になっていくと言えば多少勉強している人にはわかりやすいかと思います。
また「配当利回りが4%を超えているため、下値リスクは限定的ですよ~」と高配当を謳い、誘い水を掛けられた人もいると思います。
ですが、配当というものはそもそも利益が出せて初めて出せるものであって、利益が出せなければ減配となり今の配当利回りを維持することすらいずれ厳しくなるとみています。
当然ながらタコ配は違法行為であるため、財務省大株主、225採用銘柄の日本郵政が到底できるとは思えません。
つまり、配当も今後経営戦略を変えて業績回復が出来なければ減配のリスクにさらされているというわけです。
また先日、傘下のゆうちょ銀行がリスク資産である株式の保有比率を高めるというニュースがありました。
参照:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-08-30/OVG5LA6KLVR901
「おいおい、これまで護送船団方式に支えられてきたお前さんがいきなりそんな大海に出るような真似して大丈夫か?」と言いたくなります。
日本の大口の機関投資家であるGPIFでさえ運用益マイナスを出すような運用素人ばかりなのにゆうちょがプラスの収益を出せるとはお世辞にも思えません。
また、記事の内容を見るとESG投資の視点を取り入れながら(中略)と書いてありますが、一昨年くらいからこのESG対象投資についてピックアップされるようになりましたが、まだまだこれに注目されるのはあと早くて3年は先のことかと思います。
社会性はあるかと思いますが、まずはそれ以前に利益が出せなければ意味がありません。
ただ今回の売り出しで財務省が集めた資金は全額東日本大震災の復興財源に充当される予定です。
大義名分は非常に素晴らしいと思います。
しかし、それならばわざわざ郵政株をワンクッション置かずに直接自治体に寄付する方がよっぽど気持ちがいいと思います。
おそらくセルサイドの人間から無知な個人投資家へ向けて「市場価格より安く買える」だの「配当利回りが高いから持っていて上がればキャピタルゲイン(譲渡益)も得れて一石二鳥ですよ」「寄付したつもりが儲かる可能性もある」なんて言われて買わされた人がわんさかいるんじゃないかと思います。。。
残念ながらその希望は望み薄だと個人的には思いますが、こうやっていつも騙され嵌め込まれるのは個人投資家なんですね。
本当にやるせなくなります。
「自己責任」と言われればそれまでなのですが、そんな人にもっと株式投資の知識を身に付けていただければこんな簡単に良し悪しつく銘柄を騙されて買わされることもないですし、いつか力を付けて打ち負かして欲しいなと思います。
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【執筆者(講師)情報】
中山まさかず
学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。