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◆海外勢による見直し買いが入る日本株
2019.10.21 -
こんにちは、株の学校 マナカブ.com講師の中山です。
先週末、英国議会でEUと取り交わした離脱案が否決となり、英国は離脱延期の申請をEU側に提出する運びとなりました。
英国のボリス・ジョンソン首相はこの採決結果に不満で、離脱延期の申請とは別に、延長をするつもりはないとの書簡をEU側に提出しています。
ふりだしとは言わないまでも再び今後の行方が分からなくなったブレグジット問題ですが、今朝がたメルマガでもお送りしましたようにブレグジット問題がハードになろうがソフトランディングしようがすでに市場ではあらかた織り込まれており影響は軽微であるとお伝えしました。
その結果、日本株は本日+56.22円と明日祝日を挟むこともあり、小幅高となりました。
9月相場は20625円スタートから一気に上値を駆け上がり、9/19に22255円の高値を付けた後、10月初旬までに21300円割れの調整、その後米中通商協議への進展期待などもあり、再び上値追い再開となり、10/18には22649.85円となかなか抜けきれなかった4月高値22362.92円を超える展開となりました。
この乱高下の裏で暗躍したのが海外勢です。
海外勢は8月3週目~9月3週目まで現物、先物を5週連続で買い越しに回り、金額ベースでは2.2兆円強の買い越しとなりました。
この大量の買い越しにより、売り方はショートカバーを余儀なくされ、その買い戻しを巻き込み10/18の22649.85円の高値を付ける展開となりました。
その後、9月4週、10月1週と約1兆円の売りに転じたことで調整が入り、10月2週目(7~11日)には1147億円と小幅ではありますが、再び買い越しに転じたことで下げ止まりとなりました。
さらに投機筋の円ポジションも11週ぶりに円ショートが積み上がる結果となっています。
おそらく10月3週目(15~18日)は高値を更新していることから、短期のヘッジファンドらは円を売りながら、最低でも4.5000億円規模の現物、先物への大量買いが流入したものと推察されます。
これが令和相場になって4月以来、年初来高値を更新する結果をもたらしたと思われます。
海外勢は今の、そしてこれからの日本株をどうみているのか?
ここに注視しておく必要があります。
これまでずっと「動かない日本株」、「出遅れている日本株」、「割安のまま放置されている日本株」と散々な言われようをしていましたが、海外勢が再び日本企業の下期に差し掛かるタイミングで買い越しをしてきたことで業種別でみても景色が変わってきたような気がします。
まずは業種別の年初来パフォーマンスです。(10/21付)
ことしは5月から加熱した米中通商問題により、TOPIXのパフォーマンスを上回る業種はわずか10業種にとどまっています。
しかしこれを1か月来の業種別パフォーマンスで見ると以下になります。
1か月来パフォーマンスで見るとTOPIXを上回る業種が15銘柄と増えており、この1か月間は復調した業種が多いのが明らかにわかります。
年初来ではTOPIXと比肩するとマイナスパフォーマンスだった「建設、小売、繊維製品、パルプ紙、ガラス土石、ゴム製品、食料品」がTOPIXをアウトパフォームする展開となったわけです。
前掲のブログで、「米中問題に進展が見られれば消費増税のマイナスインパクトを払しょくする」とお伝えしていましたが、まさにその通りの展開となり、これまで消費増税の影響で敬遠されていた小売、食料品が買い直されたことが分かります。
また建設、繊維製品、パルプ紙、ガラス土石、ゴム製品あたりは台風、大雨による自然災害の影響があったことで皮肉にも復興特需の思惑から買われたものと思われます。
◆中間決算では下方修正でも買われ、上方修正でも売られる
米国ではすでに7-9月期決算がラッシュとなっていますが、今月下旬より日本でも3月決算企業の中間決算がスタートとなります。
今回の決算発表では、下方修正が出てきやすいと思われますが、難しいのが「下方修正=株安」とは一概にならないという点です。
先に安川電機が10/10に中間決算を発表、結果は前年同期比で
売上高 211780(▲14.7%)
営業利益 12457(▲59.2%)
経常利益 12778(▲58.2%)
純利益 8793(▲66.3%)
と大幅な減益、さらに通期見通しも期初の利益から考えると約半分に下方修正されました。
決算を公表した安川電機は翌11日、一時3695円まで売られる場面もありましたが、その後切り返しその3695円を割り込むことなく堅調な展開となってきています。
安川電機【6506】
期初の時点から今期は減益見通しでしたがその減益幅が拡大し下方修正、しかも下方修正幅も期初の見通しから比べると約半分となったとて、株価は堅調に推移しています。
サンプルが安川電機だけしかないので、断定はできませんが今後決算発表で下方修正が出たとしても電気機器や機械などは受注底入れ感、今が一番最悪期という印象が強まれば、決算をきっかけに株価は買われる展開となってくるのではとみています。
株価と相関性の高い工作機械受注は下げ基調ではありますが、3カ月移動平均ではやや底入れの兆しも見えてきているのかな?という感じです。
景気循環で最も短期のサイクルが企業の在庫投資からみるキチンサイクルですが、これは1サイクル約40カ月で推移します。
前回の企業の在庫が底入れし回復に入ったのが16年半ばあたりと考えれば足元の在庫調整がそろそろ終わってもおかしくはないタイミングに差し掛かってきているということです。在庫調整がもう終盤に差し掛かっていると考えれば、足元の下方修正も納得のいくところで「これから先は新規受注に期待が持てる」という思惑に変わることも考えられます。
よって、下方修正だからとて投げ売りなどせずに少し株価の動きを様子見するくらいの余裕があると良いと思います。
普通に考えれば今回の安川電機の決算、下方修正の内容だけでみれば失望売りしたくなるところですが、フタを開けてみれば株価は小じっかりしており、投げ売ってしまった投資家は後悔していることかと思います。
逆にこのような動きが目立ってくると怖いのが上方修正で材料出尽くしというパターンです。
所謂、今は良いけど今後は?という思惑です。
これが出てきやすいのがモメンタム株です。モメンタム株というのは高成長への期待で支えられていますのでその伸びに陰りがみえたりすると踵を返したように売り込まれます。
一日で2ケタ%下がることも往々にして起こります。
上方修正を発表したとしてもその修正内容が市場の期待に応えられなかったり、発表をきっかけに材料出尽くしで売られたりしますので、「モメンタム一色!」なんてポートフォリオを組んでいたりすると決算後のパフォーマンスが悪化する恐れもありますので警戒が必要かと思われます。
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【執筆者(講師)情報】
中山まさかず
学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。