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◆インフレはピークアウト間近
2022.10.21 マーケットニュース -
おはようございます。株の学校 マナカブ.com講師の中山です。
【相場概況】
◆きのうの日米株価指数終値
日経平均株価 27,006.96 -250.42
TOPIX 1,895.41 -9.65
マザーズ 727.75 -4.96
NYダウ 30,333.59 -90.22
ナスダック総合 10,614.84 -65.66
S&P500指数 3,665.78 -29.38きのうの米国市場は朝方は堅調スタートとなったもののFRBの要人発言
により金融引き締めが継続するとの見方から米朝金利が上昇、株価の
重石となりました。ダウ採用銘柄のIBMや化学セクターのダウ・インクが市場予想を上回る
決算を発表したことから安心感が広がり、好スタートとなり、ダウは
一時400ドル近い上昇をみせました。しかしその後、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が高止まりする
インフレを理由に11月、12月の利上げ幅も0.75%になるとの見方を
示したことから米長期金利が4.2%まで上昇したことで堅調に推移
していた株価は失速、マイナス圏に沈む展開となりました。FRBの政策金利見通しでは、11月のFOMCで0.75%、12月は0.5%の
利上げがコンセンサスとなっていますが、12月も0.75%の利上げを
実施する可能性が浮上したことで警戒感が広がりました。FOMC(金融政策の会議)はパウエルFRB議長を含む7人のボードメンバー
と5人の地区連銀総裁が毎年輪番制で担当(厳密にはNY連銀は常任のため
4つの地区連銀が輪番制)し、合計12人の投票権利を持つ人間の多数決
により政策金利が決定します。ちなみに今回発言をしたハーカー総裁はことしの投票メンバーではありません。
ことしの投票権が与えられている地区連銀はニューヨーク連銀
(ウィリアムズ総裁)、ボストン連銀(コリンズ総裁)、カンザスシティ
連銀(ジョージ総裁)、クリーブランド連銀(メスター総裁)、
セントルイス連銀(ブラード総裁)の5人です。当然ながらこの投票権を持つメンバーの発言力の方がマーケットに
与える影響は強く、今回のハーカー総裁のように投票権を持たない
メンバーの発言の影響は限定的なものだとみています。さらに言えば、もともとハーカー総裁はタカ派(金融引き締め積極派)
色の強い人なので、発言も引き締め方向への発言が出やすく、市場への
サプライズ感はあまりありません。寧ろハト派(金融緩和派)のシカゴ連銀のエバンス総裁やサンフランシスコ
連銀のデイリー総裁などがタカ派のコメントを発信することの方が
マーケットへのインパクトは大きくなります。きのうはハーカー総裁に加えて、投票権を持つボードメンバーであるFRBの
クック理事(ハト派)が登壇したパネル討論会でインフレを懸念し、これを
抑制するために利上げを続ける必要性があるとコメントしたことが報じられた
ことが影響が大きかったと思われます。◆インフレはピークアウト間近
FRBの要人らはインフレに強い懸念を示していますが、各種データを冷静に
分析すればピークアウトは近いとみています。ことし6月に1バレル120ドルだった原油価格は足元で80ドル台まで低下
していますし、金をはじめとしてシルバー、銅価格も軒並み下げています。これらコモディティ(商品)価格を総合的に指数化したCRB指数をみても
2020年のコロナショックを底に上昇トレンドを継続してきましたが、トレンド
が崩れてきています。(CRB指数・週足チャート)
またサプライチェーンの混乱も落ち着きをほぼ取り戻しつつあり、指数化した
グローバルサプライチェーン圧力指数(GSCPI)も足元では1.05まで下がって
きました。(グローバルサプライチェーン圧力指数の推移)
これが高くなればなるほど輸送コストの上昇、物流の滞りが出ていることを示し、
足元ではだいぶ緩和されてきています。今回の上昇が過去を見ても類を見ないほど
上昇していたことが分かります。またきのうは9月の米中古住宅販売件数が公表されましたが、年率換算で471万件
と8月の480万件から伸びが鈍化しています。(米国中古、新築住宅販売件数推移【年率換算】)
これはご周知の通り米国で金利が上昇していることで住宅ローン金利も足元では
6.9%まで上昇してきていることが要因です。(米住宅ローン金利推移)
現在の住宅金利は2008年のリーマンショック以降で最も高い水準でその前年に
サブプライムローンという低所得者層向けの住宅ローンが流行りましたが
(後にサブプライムショックとなり、リーマンショックの引き金に)そのときでも6.6%でしたので、今がいかに高金利であり住宅購入の足かせに
なって需要鈍化を引き起こしてきているのが分かります。これらを踏まえるとインフレはピークアウトが迫りつつあり、市場は利上げ幅の
縮小の号砲が鳴るのを今や遅しと待ち構えてのフライングスタートが足元で
起こっていて、先んじて買い仕込む投資家とインフレ&金融引き締め継続の
見方をする投資家とのせめぎ合いによりボラタイルな展開になっているもの
とみています。日経平均株価は米長期金利が上昇したことで米株安となったことを受けて
本日も軟調な展開となりやすいとみていますが、目先は27000円周辺を
往来しつつ、来月に控える米中間選挙、そして年末に向けて徐々に
インフレのピークアウトも見えてくることから株高基調になりやすい
環境が整ってくるとみています。※内容については万全を期しておりますが、その内容を保証する
ものではありません。また当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切の
責任を負いません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断で
行っていただけますようお願いいたします。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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【執筆者(講師)情報】
中山まさかず
学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。