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◆雇用者が増えることは実は株価にプラス材料だった
2023.01.11 マーケットニュース -
いつもお世話になっております。マナカブ.com講師の中山です。
◆きのうの日米株価指数終値
日経平均株価 26,175.56 +201.71
TOPIX 1,880.88 +5.12
マザーズ 731.41 +10.93
NYダウ 33,704.10 +186.45
ナスダック総合 10,742.63 +106.98
S&P500指数 3,919.26 +27.17きのうの米国市場は3指数揃って上昇となりました。
この日、パウエルFRB議長の講演がスウェーデン国際会議でありましたが、
そこで市場が警戒していたタカ派的な発言がなかったことが安心材料
となり、ダウは反発、ナスダックは続伸となりました。ただ翌12日に12月の米CPI(消費者物価指数)の発表を控えていること
もあり、各指数とも1%未満の小幅な上昇にとどまっています。個別銘柄ではこのところ安く売り込まれていたハイテク株の一角に買いが
入り、マイクロソフトやアップル、グーグル、メタなどが上昇。
半導体関連のエヌビディアやアプライドマテリアルズ、ラムリサーチ、
KLAなども1~2%の上昇となっています。一方で、アナリストが投資判断を引き下げた航空機のボーイングや
ウォルト・ディズニー、医療保険のユナイテッドヘルスなどが売られました。◆雇用者が増えることは実は株価にプラス材料だった
明日発表される12月の米CPIですが、前月比で0.0%の伸び、前年同月比で
6.5%の伸びの予想となっています。変動の激しい食品、エネルギーを除くコアでは前月比0.3%、前年同月比で
5.7%の伸びとなっており、コアの前月比以外はすべて前回11月の結果より
もインフレが落ち着く予想となっています。きのうもお伝えしたように、直近では雇用統計で雇用者数や失業率が予想
よりも良かったのにもかかわらず株価の上昇につながったりとこれまでの
動きと違った動きが出始めるようになってきいます。そのため、「結果がこうなれば株価はこう動く」と言いにくい状況ですが、
ごくごく一般的に考えれば今回のCPIの予想とほぼ一致、または予想を
下回る結果となれば金利の先高感が後退し、株高になります。足元の商品(コモディティ)の総合的な価格を示すCRB指数を確認する
と昨年6月に330ポイントの高値を付けてから今週268ポイントまで
▲18%超の下落となっており、原油などのエネルギー価格上昇による
インフレは起きていないとみて良いと思います。(CRB指数・週足チャート)
ただ、先週末の雇用統計の詳細で公表されていたどの職種、職業で
雇用者数が増えているかを確認するとレジャー、ホスピタリティ
(サービス業)で67,000の増加、ヘルスケア関連で55,000人増加
となっており、アマゾンやツイッターなどハイテク関連で人員削減が
行われている一方で、サービス業などではまだまだ売り手市場で
あり、食品やエネルギーのコスト高によるインフレよりもサービス業
を中心とする賃金上昇、人件費の高騰によるサービス価格の上昇に
よるインフレがいつ落ち着きを見せるかが注目点です。(米国・労働参加率の推移)
米国の労働参加率をみても、コロナ前の水準まで依然として戻ること
なく62%を超えたあたりで停滞しています。これが人件費の高騰を招いており、商品・サービス価格に転嫁されて
いる状態です。(米CPIのサービス価格推移)
CPI全体としては昨年6月に前年同月比で9.1%のところから、7月から11月まで5カ月連続で
低下してきています。しかし、サービス価格に関しては、11月結果は前年同月比で6.8%の伸びとなっており、
昨年1月時点の4.1%から毎月上昇し続けています。このサービス価格が落ち着いてくるにはサービス業の働き手が増えることです。
そう考えるとメディアで言われているような「雇用者数が増えたり、
失業率が低下したままだと金融引き締めが長期化して株安になる」という
見方は実は間違っていて、「雇用者数(特にサービス業での)が増えた方が賃金インフレも落ち着き、
延いてはそれがサービス価格の低下につながる」というのが正しい
見方なのかもしれません。幸いにもレジャー、ホスピタリティ、ヘルスケア業界で今回の雇用者数
22.3万人の約半分を占める雇用が起こっていますので、順調にここの
雇用が伸びればサービス価格の高騰も高止まりしピークアウトしてくる
可能性があるかと思われます。CPI発表後の株価の動きを考察すると前回11月のCPIが発表された
のが12月13日でしたが、総じて前回10月の結果を下回り株価上昇に
つながりました。今回も11月の結果を下回る内容となれば株高になる可能性はありますが、
上述したサービス価格のインフレが落ち着きをみせてくるかどうか
です。全体は下がってもサービス価格の上昇に落ち着きが見られない場合、
これをネガティブ材料として株安になるということも考えられますので
注目していきたいと思います。※本日の経済キーワード※
【CRB指数】
エネルギーや貴金属、農産物など19品目で構成され、世界的な物価や
景気の代表的な指標として使われる。
特に製品原料として使う商品を多く含む。よって物価上昇率(インフレ動向)の先行指標として国際的に
注目されている。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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ません。また、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切の責任を
負いません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断でなさるように
お願いいたします。
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【執筆者(講師)情報】
中山まさかず
学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。