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◆ことしも続く金融政策の方向性頼みの相場展開
2023.02.09 レポート -
いつもお世話になっております。マナカブ.com講師の中山です。
◆きのうの日米株価指数終値
日経平均株価 27,606.46 -79.01
TOPIX 1,983.97 +0.57
マザーズ 792.66 +10.65
NYダウ 33,949.01 -207.68
ナスダック総合 11,910.52 -203.27
S&P500指数 4,117.86 -46.14きのうの米国市場はFRB高官のタカ派(金融引き締め)発言を受けて、
リスク回避から利益確定売りが出やすい一日となり、3指数揃って
下落となりました。前日、7日にワシントンの講演で登壇したパウエルFRB議長は、
「ディスインフレ(インフレの鎮静化)が始まったかもしれない」
と物価上昇のピークアウトに対する認識を今月頭のFOMC以後、改めて
示したことで、その安心感から上昇していました。しかし、きのうはFRBのウォラー理事やニューヨーク連銀のウィリアムズ
総裁が「インフレ抑制にはまだ道半ばであり、長い戦いになる」、
「引き締め的な政策を継続する必要がある」とそれぞれ発言したこと
が意識されたことで米長期金利は一時3.7%弱のところまで上昇。これを受けて、リスク回避姿勢が強まり、金利に敏感なハイテク株を
中心に売られたことでナスダックは▲1.68%の下落となりました。個別銘柄ではEVのテスラや動画配信のネットフリックスが戻り歩調
継続で小幅に続伸。その一方で、アルファベット(グーグル)がオープンAIがリリース
している「Chat GPT」に対抗策として対話型AIの「Bard」を発表した
ものの、そのインパクトは薄く、▲8%弱の大幅安となったほか、
ビデオ会議システムのズーム・コミュニケーションズもコロナ後の
リモートワークによる急成長の反動で全従業員の15%にあたる1300人の
人員削減を発表したこともあって、▲6.2%となり、足元戻り歩調だった
メタ(フェイスブック)もきのうは▲4.2%となり、ナスダック指数の
重石となりました。◆ことしも続く金融政策の方向性頼みの相場展開
上述したように7日はパウエル議長の講演で過度なタカ派寄りの発言が
なかったことが好感され、株価上昇につながった一方で、きのうは
FOMC投票メンバーであるFRB高官からタカ派寄りの発言があったことで
市場のセンチメントがリスクオフに傾き売られる展開となりました。この動きを見るとことしもインフレ指標はピークアウトを見せつつも、
どうやら市場参加者の心の中は昨年とかわらず、FRB高官の発言に
右往左往している様子が窺えます。改めて、ここでFOMCについて解説をしておくと、FOMCは毎年、
年8回(約ひと月半ごと)行われる金融政策会合でパウエルFRB理事長
を含めて12人のメンバーで投票が行われて多数決により政策金利をはじめ
とした金融政策が決まります。12人のFOMCメンバーのうち、FRB理事長、副理事長のほか、5人の理事、
そして毎年輪番制で4人の地区連銀総裁とNY連銀総裁(常任)の合計12名
で投票が行われます。メディアでもたまに投票メンバーでない地区連銀の総裁が発言すること
も取り上げられますが、投票メンバーでない場合は、あまり相場に
影響しない、または影響したとしても一時的な値動きで終わることが
ほとんどです。また投票メンバーはそれぞれタカ派寄り、ハト派(金融緩和)寄り
のスタンスが分かれており、元々タカ派の高官がタカ派発言をする
よりもハト派の発言をした方がインパクトは大きくなり、逆も然り
です。(2023年FOMCメンバーとタカ派、ハト派姿勢)
ことしのFOMC投票メンバーとタカ派、ハト派は上図でまとめています
が、ご覧の通りタカ派姿勢の高官が若干ながら多いのが特徴です。きのう発言したウォラーFRB理事、ウィリアムズNY連銀総裁は元から
タカ派の人たちで、タカ派の発言が出てきても至極当然のことという
見方ができます。タカ派の人間がタカ派発言をしたのか、ハト派の人間がタカ派発言を
したのかという点で相場への影響力が大きく変わってくるため、
これを把握しておくことは非常に重要です。また日本でもことしの4月に日銀の黒田総裁が退任し、新総裁の人事が
もう間もなく発表されます。予定では早ければ2月10日という話も出てきており、現在有力候補として
雨宮氏が新総裁の座に就く可能性が高いとされています。雨宮氏は東大を卒業後、日銀に入行し金融政策を立案する企画局中心に
キャリアを積んできた方で生粋の日銀の人です。ほかにも中曾氏、山口氏という候補が挙がっていましたが、岸田首相から
雨宮氏に直々に打診があったこともあって、上記のキャリア背景を加味して
考えるとおそらく断ることはない思われます。また候補者3人の中でももっともハト派とされるのが雨宮氏であり、ある程度
現行の金融緩和姿勢を継続していくという見方が強く、足元で再びドル高円安
基調になってきているのはこれを先取りした動きであるとみています。ただこれも現行のイールドカーブコントロール(長短金利操作付き量的・
質的金融緩和)は長期国債を日銀、民間銀行が買いまくって金利を抑える
政策であり、無制限にはできない、いずれ政策転換を日銀は強いられるだろう
と海外の債券ディーラーたちから見られていて、彼らは日本国債のショート
ポジションを積み上げています。まさに徐々に衰弱して動きが止まるバッファローをそばで今や遅しと待って
いるハイエナの状態です。雨宮氏が新総裁になってハト派継続というよりも、新総裁誕生で現行の金融
政策への転換の可能性も見えてくるため、一方向にドル高円安株高という
ような動きにもなりづらいとみています。仮になったとしても一時的なものに
とどまるという見方をしています。先日、お伝えしたようにきのうの米市場の動きからも分かるようにちょっと
したきっかけでセンチメント(市場心理)がガラリと変わってきます。メインはインフレ動向、それに伴った金融政策の方向性が市場の注目点
ですが、これに加えて年内に地政学リスクの再燃や企業の貸し倒れ、
大手ファンドの解約の一時停止などセンチメントを悪化させる材料が出て
くるとみているため、枝葉のこういった要因で急落するリスクは常々
頭の片隅に入れておいてもらえればと思います。目先の相場の転換点になりやすいのは変わらず14日発表の米CPIです。
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