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◆取り付け騒ぎから第2のパリバショックにつながる恐れ
2023.03.16 日米相場概況 -
いつもお世話になっております。マナカブ.com講師の中山です。
◆きのうの日米株価指数終値
日経平均株価 27,229.48 +7.44
TOPIX 1,960.12 +12.58
マザーズ 742.40 +4.05
NYダウ 31,874.57 -280.83
ナスダック総合 11,434.05 +5.90
S&P500指数 3,891.93 -27.36きのうの米国市場はダウは反落、ナスダックは小幅続伸と指数まちまち
の展開となりました。先週末から今週にかけて米国の銀行が破たんしたことを受けて、今度は
これが欧州に飛び火し、スイス大手のクレディスイス銀行への経営危機
が警戒され欧州株が大幅安、これを受けて米市場も朝方売りが進むも
取引終盤にかけて下げ幅を縮小させる展開となりました。問題となった今回のクレディスイスですが、ことし1月時点の世界の
銀行の総資産ランキングでは8290億ドル(約110兆円)であり、43位に
上ります。総資産なので預金(他人資本)も含む額ですが、日本のGDPの5分の1
相当にあたります。同行の財務報告に関する内部統制に「重大な弱点」があることを確認した
と明らかにし、これを受けてクレディスイスの主要株主であるサウジ・
ナショナル・バンク(SNB)が約10%の株を保有していますが、追加
出資する意向はないことを表明したことがきっかけで信用不安が再燃
する格好となりました。きのうは前日のCPIの発表に続き2月のPPI(生産者物価指数)の発表が
ありましたが、前月比▲0.1%、前年同月比4.6%とともに予想を下回る
結果となり、8カ月連続でインフレ率の低下が見られましたが、ほとんど
材料視されず、信用不安によるリスクオフの動きが強まる一日でした。ただ取引終盤にかけてスイス中銀がスイス金融市場監査局(FINMA)との
共同声明で「クレディ・スイスはシステム上重要な銀行に対する資本や
流動性の要件を満たしている、もし必要であれば同行に流動性を供給する」
と表明したことでやや持ち直す展開となりました。ダウは一時700ドル下落しているところから半分の下げ幅に縮小、
ナスダックはプラス転換となっています。個別銘柄ではシティやJPモルガンなど金融株が再び売られたほか、
景気減速懸念からアルミ大手アルコア、ニューコア、銅関連のサザン・
カッパーやフリーポート・マクモランなどが▲6~10%超の大幅安
となりました。◆取り付け騒ぎから第2のパリバショックにつながる恐れ
*パリバショック
2007年8月、アメリカのサブプライム住宅ローン危機による
市場混乱を引き金にフランスのBNPパリバ傘下であった
ミューチュアル・ファンドが投資家からの解約を凍結すると
発表これにより、フランス国内だけでなくヨーロッパ全体、また
世界のマーケットが一時的にパニックに陥った米国の銀行破たんに端を発した今回の信用不安ですが、取り付け
騒ぎであれば、先日の米財務省、FRBが預金の全額保護という対策を
講じることもあり得ます。しかし、その取り付け騒ぎの際にシリコンバレーバンクなどは
預金者の資金を安全である債券運用に回していて、昨年より欧米の
中央銀行が利上げを推し進めたことで債券価格は下落し、多大な
含み損が発生するという事態に陥ってしまいました。そんな状況の中、顧客の多額の引き出しに対応できず破たん
となりました。ただ、この信用不安はまだ緒に就いたばかりの可能性があり、
仮に債券運用を主軸にした銀行や保険会社、運用会社などで
投資家からファンドの解約などが出た場合、それに対応できない
、または多額の含み損が露わになるところが出てくるという事態が
次に警戒しておくべきリスクであると個人的にみています。仮に満期まで待たずに多額の解約が出た場合、それに応じたとしても
ご周知の通り昨年から大きく金利が上昇し、既発債の価格は下落
していることから投資家は元本割れになると思われます。また解約に応じるための資金準備で債券を大量に売却することに
なれば急激な金利上昇を招き、リスクオフから欧米市場では
株安、債券安、通貨安のトリプル安につながるおそれもあります。受講生の方にはことし1月の時点で「米市場崩壊のサインが点灯」
というタイトルで特別レポートを配布させていただいていますので、
改めてそちらをお時間のある時にお読みいただければと思います。保存して、いつでも読める状態にしておいてもらえると幸いです。
足元では多少株安になった程度で、お上の支えもあるためもうしばらく
は乱高下が続きますが、上記の事態に陥れば逆資産効果が鮮明となり、
リセッションリスクが高まることから本格的な下げにつながりやすく
なります。※本日の経済キーワード※
【逆資産効果】
保有している株式や投信などの金融資産や不動産などの資産価格が
下落することによって、消費や投資が手控えられ、経済全体が
収縮に向かうこと。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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※内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではあり
ません。また、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切の責任を
負いません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断でなさるように
お願いいたします。
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【執筆者(講師)情報】
中山まさかず
学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。