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◆米国の労働環境の強さの裏話
2023.06.02 マーケットニュース -
いつもお世話になっております。マナカブ.com講師の中山です。
◆きのうの日米株価指数終値
日経平均株価 31,148.01 +260.13
TOPIX 2,149.29 +18.66
マザーズ 747.48 -0.58
NYダウ 33,061.57 +153.30
ナスダック総合 13,100.98 +165.69
S&P500指数 4,221.02 +41.19きのうの米国市場は債務上限の適用を一時的に停止する法案が下院で
可決され、デフォルトリスクが回避されるとの安心感から3指数
揃って反発上昇となりました。足元ではこの債務上限問題がマーケットの注目材料となっていますが、
きのうは民間の給与支払い代行サービスのADPが発表した5月の雇用報告
では17.0万人の予想に対して、27.8万人雇用が増えたことや、27日の
週の新規失業保険申請件数も23.2万件と予想よりも低い結果となりました。これにより金融引き締めへの警戒感はくすぶるものの、フィラデルフィア
連銀のハーカー総裁が利上げ停止を支持する考えを表明したことで米長期金利
が低下、株式市場には追い風となりました。個別銘柄では下方修正を発表した1ドルショップを運営するダラーゼネラルが
▲19.5%と大幅安となった一方で、その他の消費関連のナイキ、日用品の
ジョンソンエンドジョンソンなどが軟調。一方で1兆ドルクラブの仲間入りをしたエヌビディアはきのうの下落分を
帳消しにする+5%高となり、金利が低下したことで金関連のニューモント、
バリックゴールドなどが上昇となりました。◆米国の労働環境の強さの裏話
あまり日本では報道されていませんが、雇用統計を中心に今回の失業保険
申請件数の減少やADPが公表する雇用報告も予想を上回る結果となっており
多くの投資家は米国の労働環境は非常に強いという印象を持っている人が
多いと思います。実はその背景にあるのがダブルワークです。
昨年末からことしの頭にかけてハイテク大手が大幅な人員削減をしたこと
は記憶に新しいところかと思いますが、その影響で一時解雇になった人
たちが再就職先を求めて就職活動を行って米国の求人件数も豊富なこと
から働き口は職を選り好みしなければ見つかる状況にあります。しかしながら、インフレの影響で低い給料のところでは生活ができなくて
一部の働き手は収入を増やすためにダブルワークを行っています。この分も含まれた雇用統計データが公表されているため数字だけで見ると
強いように感じてしまうのです。このインフレの影響は個人だけでなく企業サイドにも大きな影響を及ぼして
いて、物価全体は下落傾向にありますが、一度上昇し始めたらなかなか下落
しにくいとされる粘着性の高い帰属家賃やサービス価格は高原推移している
状態です。(4月の米CPIの前年比推移)
今回の小売り大手のダラーゼネラルが下方修正に至った背景にあるのが消費者が
サービス価格の上昇に根負けしてモノ消費を抑えているためです。上記で挙げたナイキやジョンソンエンドジョンソンのほかに、同業の1ドルショップ
を運営するダラーツリー、百貨店大手のメイシーズ、ディスカウントストアの
ターゲットなどは足元で下落基調をたどっています。ただダラーツリーは本当のリセッションに陥ると株価の強さを見せます。
2008年のリーマンショック時にS&P500が大暴落をしていくのを横目に涼しい顔をして
上昇基調をたどっていることが分かるかと思います。(リーマンショック時のダラーツリー・週足チャート)
これは景気後退に陥ったとしても最低限生活はしていかなければならないため、
普段使っている日用品などは消費コストを抑えるために1ドルショップの利用が増えた
というわけです。日本でも20年初頭にコロナの感染拡大が起こった際に一時的に100円ショップの前に
大行列ができていた記憶があります。その時は緊急事態宣言で入店者数の規制でなのか、仕事が減ったことで収入が減った
人が消費を抑えるために100円ショップの利用が増えたのか、その両方なのか、までは
分かりませんでしたがとにかく景気後退に入ると強いのがこれら1ドルショップや
100円ショップになります。サービス価格もいずれは落ち着きをみせてくることを考えれば、ダラーツリー、
ダラーゼネラルあたりは長期で見れば安くなったところは買いたい銘柄です。債務上限問題の与野党のプロレスごっこは予定通り合意に至る見通しです。
ただ問題はその後で、先日ソフトバングG【9984】がS&Pに格下げされた
ように米債も今回の銀行破たんの影響を受けて格下げされるリスクも残って
います。民主、共和党で合意に至ったとしても2011年のオバマ政権の時と同じく
合意後に格下げという事態になれば、債券市場の混乱が株式市場に巻き起こる
リスクはくすぶっています。何度も言うように6~8月は鬼門です。警戒感を持って相場と対峙して
いきましょう。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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ません。また、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切の責任を
負いません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断でなさるように
お願いいたします。
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【執筆者(講師)情報】
中山まさかず
学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。