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◆米市場はテクニカル的に上よりも下
2023.06.27 マーケットニュース -
いつもお世話になっております。マナカブ.com講師の中山です。
◆きのうの日米株価指数終値
日経平均株価 32,698.81 -82.73
TOPIX 2,260.17 -4.56
マザーズ 811.30 -18.99
NYダウ 33,714.71 -12.72
ナスダック総合 13,335.78 -156.74
S&P500指数 4,328.82 -19.51きのうの米国市場はハイテク株を中心に利益確定売りが目立ち、
3指数揃って下落となりました。この日は改めて欧米の金融引き締めの継続が意識され、先週のパウエル
FRB議長の議会証言での7月以降の追加利上げの妥当性や、欧州でも
BOE(英国中銀)やECBが7月の追加利上げを示唆していることから、
景気悪化懸念への影響が懸念され金利に敏感なハイテク株が売られる
1日となりました。S&Pは不動産、エネルギー、素材、工業などが上昇した一方で
通信サービス、一般消費財、テクノロジー、医薬品などが下落。個別銘柄では、アナリストが投資判断を引き下げたEVのテスラが
▲6%超とハイテク株の下げを主導し、グーグルやメタ、マイクロソフト
、アップル、アマゾンなどの主力ハイテク株が総じて下落しました。また半導体のエヌビディアもこの日は▲4%弱の下落となり、台湾の
半導体、TSMCも下落。その他マイクロンテクノロジーやKLA,ASMLなどの半導体関連は小幅
上昇となったものの長い上髭を付けて引けており、後味の悪い値動き
となっています。◆米市場はテクニカル的に上よりも下
個人的には7月初旬より調整色が強まるとみていましたが、思って
いたより1週間ほど早く調整局面に到達したのかもしれません。(S&P500・週足チャート)
SP500を見ると、昨年10月までの下落の後は上昇基調へと回帰してきました。
そして現状は高値も安値も切り上げる典型的な上昇トレンド入りしていますが、
チャネル上ではその上昇の上限いっぱいのところまで買い上げられてきました。ここからさらに上を目指していくとしてもいったんは屈伸運動(調整)を挟んで
からの上昇でないと難しい展開に入ってきています。価格的には4100~4150ポイントあたりまで目先は調整する可能性があるとみています。
(ナスダック・週足チャート)
ハイテク株主導で上げてきたナスダックも同様に足元では上昇トレンド入りして
いますが、その上昇いっぱいのところまで買われたことで目先は下押し圧力が
かかりやすくなっている状況です。個人的には「ニュース(材料)がチャートを作る」と考えていますが、足元で調整色
が強まってきたのは他ならぬ金利先高感がマーケットで再認識されるようになってきた
からかとみています。(市場が考える政策金利見通し)
上図は直近の市場が考える政策金利見通しですが、次回7月のFOMCでの利上げ確率が75%
となっており、1カ月ほど前の見通しでは年内9月や11月からは利下げの見通しが強かった
のですが、上図で示されているように年内利下げを織り込む意見は少数派となりました。そして来年1月に利下げが開始されて利下げが断続的に行われるのは来年5月からという
見通しとなっています。(6月のFOMCでのFRBメンバーによる政策金利見通し)
ただし、これでも市場はやや楽観的に見ている節があります。
以前ご紹介したように6月のFOMCでFRBメンバーが考えることしの政策金利見通しは
3月の5.1%から5.6%へと0.5%引き上げられているということは0.25%ずつの利上げが
少なくともあと2回は必要と考えているということです。市場参加者の希望的観測なのかは分かりませんが、2回の利上げはまだ市場では
ほとんど織り込まれていません。よってこれが織り込まれるまでの間は調整色が強まる可能性があります。
その後、年2回の利上げが織り込まれれば、実際に利上げが実施される前に株価の
方が先に動くため底打ちを見せて再度上昇へと回帰していく動きに変わるのでは
とみています。ただこれは、比較的楽観的な見方であり、市場が起こることさえ考えていない
ブラックスワンの材料を排除した見方となります。パウエル議長も先日の議会証言で「居住・商業不動産などのポートフォリオが大きい
地銀に対して懸念を表明」していることもありますが、これもすでにメディアで
懸念材料として取り上げられているだけにブラックスワンの材料にはなり得ない
可能性があります。拙速な金融引き締めの弊害としてもっとほかにまだ見えざる市場を混乱させるような
別の悪材料が出た際には上記の楽観シナリオは崩れることとなります。日本株においては米国の金利先高観がある以上は円安が進行しやすく、円安メリット
を享受しやすい輸出企業を中心に買われやすい地合いが続くと思われます。つまり米国は金利先高観で売られても日本株は売られにくいという構図となります。
ただこれも市場センチメントが金利先高観から円安を想起する動きから輸出関連に
触手が伸びる投資行動であり、ブラックスワンが起こり、リセッションのハード
ランディングを防ぐために欧州各国の中銀が利下げに転じる動きに変われば、
日本株も対岸の火事ではないということになります。現状はこれが見えないために本当に起こるかも分かりませんし、楽観的になりやすい
状況です。そういった隙ができるときに意表を突いて起こるのがブラックスワンですので、
身を引き締めて相場に臨んでほしいと思います。※本日の経済キーワード※
【ブラックスワン】
ブラックスワン(Black Swan)とは、マーケットにおいて事前に
ほとんど予想できず、起こったときの衝撃が大きい事象のこと。従来、すべてのスワン(白鳥)は白色と信じられていましたが、
オーストラリアで黒いスワンが発見されたことにより、鳥類学者の
常識が大きく覆されました。これにちなんで、確率論や従来の知識や経験からは予測できない
極端な事象が発生し、それが人々に多大な影響を与えることから
ブラックスワンと呼ばれるようになっています。投資家は一般的に先行き不透明な状況に恐怖を感じるため、金融市場で
事前に予測していなかったブラックスワン的なイベントが起こると、
相場が大きく変動しやすくなります。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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※内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではあり
ません。また、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切の責任を
負いません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断でなさるように
お願いいたします。
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【執筆者(講師)情報】
中山まさかず
学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。