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◆米国株は来年後半まで厳しい展開になる可能性大
2023.09.22 マーケットニュース -
いつもお世話になっております。マナカブ.com講師の中山です。
◆きのうの日米株価指数終値
日経平均株価 32,571.03 -452.75
TOPIX 2,383.41 -22.59
マザーズ 712.52 -19.52
NYダウ 34,070.42 -370.46
ナスダック総合 13,223.98 -245.14
S&P500指数 4,330.00 -72.20きのうの米国市場は前日のFOMCの影響から金融引き締めの長期化観測が
重石となり3日続落となり、ダウ、ナスダックそれぞれ▲1%超の大幅な
下げとなりました。FOMC後に公表されたドットチャート(政策金利見通し)が年内の追加
利上げを示唆し、加えて来年末の利下げ回数が減少したことから金融
引き締めの姿勢が見られたことで引き続き株安の動きが継続。さらにきのうは16日の週の新規失業保険申請件数が発表となりましたが、
予想22.5万件に対して結果は20.1万件と引き続き労働市場の堅調さが
示されたことも相場の重石となりました。きのうは8月の中古住宅販売件数も公表されましたが、年率換算で予想
410万件に対して404万件とこちらは住宅ローン金利(30年)が2008年
のリーマンショック前を上回る7%を超える高水準で推移していること
もあって、2カ月連続の小幅な減少となりました。(米国の住宅ローン金利推移)
金融引き締めの長期化懸念から米長期金利は2007年11月以来の4.49%まで上昇
したことで金利に敏感なハイテク株を中心に売りが広がり、ナスダックは
3日続落し、▲1.8%の大幅な下落となりました。S&P500のセクター別では11業種すべてが下落となる全面安となり、
不動産(▲3.48%)、一般消費財(▲2.88%)、素材(▲2.04%)と
下落率上位となっています。個別銘柄では、目立った上昇銘柄はほとんどありませんでしたが、足元で
下落調整していたアパレルのGAPが4%超の上昇となったほか、ハリウッドで
続いている俳優たちのストライキが終結に近づいていることからディズニーや
映画広告のナショナルシネメディアが上昇。一方、インフレによる利益率低下から1ドルショップのダラーツリー、ダラー
ゼネラルがそれぞれ▲5%超の下げとなったほか、アマゾンやテスラ、
グーグル、アップルなどの主力ハイテク株が売られ、AMD、エヌビディア、
マイクロンテクノロジーなど半導体関連も軒並み安。キャタピラーやボーイングなど景気敏感株も売られる全面安の展開となりました。
◆米国株は来年後半まで厳しい展開になる可能性大
米国市場が足元で崩れるきっかけとなったのが今回のFOMCですが、大きく市場に
インパクトを与えた要因は2つあると考えています。きのうも「6月のFOMCからタカ派になった、そして来年の利下げの回数も減った」
ということをお伝えしましたが、今回のFOMCをもう少し深堀して解説を
したいと思います。(6月FOMC時の経済見通し)
(9月FOMC時の経済見通し)
きのうもお伝えしたように6月から9月の経済見通しに変更があり、GDPはことし、
来年とそれぞれ上方修正されました。一方で政策金利見通しは来年4.6%から5.1%に引き上げられ、ことしの5.6%の
金利見通しから事実上年2回の利下げになるとの変更がありました。ここまではきのうお伝えしていた内容ですが、さらにここから実質金利を計算すると
6月時から今回の内容では上方修正されたことが分かります。実質金利とは「名目金利-期待インフレ率」を差し引いて計算する人々が実際に
体感する金利のことを言います。今回上図のFederal fund rate(名目金利)-インフレ率(corePCE)で計算した
ものを表記しています。*実質金利が上昇するとどうなるか?
例えば金利が今のように年5%だったとして、インフレ率が3%だった場合、
100万円を銀行に預金していると5万円の利息が付きますが、インフレ率が
3%あるため、実際に1年後にいまの100万円のモノを買う際には103万円
支払わないとならないため、実際の利率としては2%ということを意味します。この実質金利が
6月時は2023年1.7% 2024年2.0%だったのに対して
今回9月時は2023年1.9% 2024年2.5%と引き上げられたということです。つまり、FBRがアナウンスしていることは「消費をするよりも貯蓄に回す
方が良いよ、お金使わない方がお得だよ」と伝えているわけです。この実質金利が上方修正されたことが今回の株安要因のまず1つ目となります。
そして2つ目はこの実質金利に対してのGDP成長率を比較すると来年は
大きな成長鈍化が見込まれたということです。今度は各年ごとに「実質金利-GDP成長率」を計算したものが2つ目のデータ
になりますが、ことしは▲0.7%から+0.2%に上方修正されたものの残り
3か月ですのでメインは来年の見通しということになりますが、来年は上図の
通り▲0.9%から▲1.0%に成長が鈍化する見通しに変わりました。GDP成長率だけ見ると6月の1.1%から今回1.5%へと上方修正されている
ので米経済は来年も強いという見方が出来ますがそれはあまりに短絡的であり、
対金利で考えるとマイナス成長ということになります。つまりこれは「お金を借りて設備投資や人材投資をしても事業の成長よりも
金利負担の方が大きくなる」ということを意味します。皆さんが銀行、貸し手だと考えてみてください。
貸出金利よりも貸した相手は事業を成長させられないということです。
そんな相手にお金を貸したいと思えないと思います。
FRBは来年引き締めを強めてインフレを退治して、2025年から復活させよう
と考えていることが読み解けます。この2つの要因から米市場は来年後半まで厳しい状況になる可能性が高い
とみています。もちろんFOMCが四半期ごとに公表する見通しはその都度修正されていきます
のであくまでも現時点での考察となりますが、この通りに展開する前提で
考えると来年の後半に米市場は絶好の仕込み場が到来するとみています。長くなりましたが、日本市場においては本日、日銀会合がありますが、
おそらく現状維持となると思われます。ただそこで為替が149円台とかに突き上げてくるようですとイエレン
財務長官も容認しているように為替介入してくる可能性が高まります
ので為替やっている方はその点は要注意です。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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ません。また、当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切の責任を
負いません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断でなさるように
お願いいたします。
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【執筆者(講師)情報】
中山まさかず
学生の頃より起業。2006年より株式投資を始める。
独自のテクニカル(チャート)とファンダメンタルズ(企業)分析による投資戦略、株式投資を行う上で必要なメンタルの保ち方などを情報発信し、これまで累計8000人以上の個人投資家へ向けてセミナーを開催。
2017年には著書も出版し、その後3回の重版。
資産運用の会社も経営する傍ら、スタートアップ企業への投融資も行う。